Japanese Institute for Public Engagement
感染症VS人類!ワクチン開発は戦いの歴史! ワクチンとは自分の免疫力を強くして病気にならないようにするためのものです。昔は赤ちゃんや子供など、感染症によってたくさんの人が無くなっていた時代がありました。ワクチンは感染症に対抗するために古くから使われており、多くの人が亡くなったり、障害が残ったりするこわい病気を人類が克服(こくふく)するのに大きく役立っています。
天然痘は紀元前1300年ごろにはあったと記録されている病気で、日本には6世紀くらいに広まり始めたと言われています。全身にブツブツができるのが特徴で、この病気になると3分の1〜半分の人が亡くなってしまうこわい感染症でした。治ったとしても後遺症(こういしょう)もありました。しかし、1798年にジェンナーという医師が作ったワクチンによって、風向きは変わります!1980年5月8日、WHOは地球上から天然痘は撲滅(ぼくめつ)したと宣言し、人類が唯一完全勝利した感染症として有名です。
ワクチンができても、撲滅まで200年。紀元前からある病気と2000年以上かけて戦い撲滅したのですから、本当に長い長い戦いだったことがわかります。
この、天然痘ワクチンの研究では、実際に子供にワクチンを使って効果を確かめたという話があり、みんなと同じくらいの子供も協力して完成しました。当時の研究者、協力者がみんなでつかんだ勝利です。
『天然痘』で、画像検索は注意!実際の患者さんの写真が出てくるよ!怖いのが苦手な人は気をつけて!
ウイルスは、感染した本人に抗体ができますが、感染したことがない病気も、ワクチンを接種することで自分の体に免疫を作り出し、予防ができます。免疫があれば、ウイルスがきても感染しないか、感染しても軽い症状で済みます。最近ではがんへの免疫力を強くして、がんの治療に役立てることができるワクチンも生まれてきました。ワクチンは子供が感染しないように使うだけでなく、海外に出かける時にその国で流行している病気にかからないように使うこともあります。予防できていれば安心ですよね。
病気をひきおこすウイルスなど(病原体といいます)や、それらが作りだす毒素のことを抗原といいます。抗原に対抗して自分の体内で作りだすタンパク質のことを抗体といいます。
抗原 →ウイルス(病原体)などが作る毒素。
抗体 →抗原に対して体が作るタンパク質。
ワクチン→人工的に処理した抗原で、ワクチンを使うと自分の体内に抗体を作りだすことが
できる。遺伝子配列(いでんしはいれつ)がわかるようになった近年では、ワクチン開発も早く進むようになりました。
注目の検査は3つ! 調べる「もと」が違います。
1.感染している人や動物から唾液(だえき)などのサンプルを集める。
2.そこからウイルスや抗原(毒素)を取り出す。
3.ウイルスを弱体化させ、「生ワクチン」か「不活性化ワクチン」にする。
弱体化の方法は2種類
人に使っても症状を出さない程度にまで弱めたり無くしたりした「生ワクチン」
病原体や毒素成分を処理(しょり)して病気にかからなくした「不活化ワクチン」
4.防腐剤(ぼうふざい)などを調整して、持ち運びができるようになったワクチン候補品について、治験を行う。治験でボランティアの人達にワクチンの候補を使ってもらい、効果的に抗体ができるかどうかを確認する。
5.治験の結果をみて一番効果的で安全なものを選んだら、製品として大量に製造。
6.厳しいチェックを受けて、いざ病院へ!
製造にもさまざまな方法があり、かかる時間や製造できる量にも差があります。安全なワクチンを製造することが大切です。
感染リスクのレベル | どんな人? | 理由 |
---|---|---|
すごく高い | 医師、看護師(医療関係者) | たくさんの患者さんと会うため |
高い | 高齢者、子ども | 免疫力が弱いため |
感染リスクが高い職業 | 病原体がたくさんいる場所で働く必要がある、など | |
ふつう | 一般の人 | リスクは高くないが予防は大切 |
感染を受けるリスクが最も高いのは、多くの患者さんに対応する医師や看護師などの医療関係者の人達です。これからも安心して感染対策を進めていくために、ワクチンはまず医療関係者に使ってもらいます。その次に、感染に弱い高齢者や子供、感染するリスクの高い仕事をしなければいけない人達に使ってもらい、順番にワクチンを使う人の数を広げていきます。 治験段階でワクチンを使うボランティアの人数には限りがありますが、社会全体で多くの人が使い始めるとそれまでには見られなかった症状がでてくることがあります(お薬の場合は副作用といいますが、ワクチンの場合は副反応といいます)。こうしたデータを注意深く見守っていき、安全で安心なワクチンが使えるようにしていくことが大切です。
細菌感染症に対する抗生物質の開発の歴史と同じく、ワクチンはウイルス感染症と人類との長い闘いの中で開発されてきました。有効なワクチン開発の結果、天然痘は地球上から根絶することができました。
しかし、すべてのウイルス感染症に対して効果的なワクチンがあるわけではなく、まだ多くの研究や開発を進めることが必要です。技術開発の進歩にあわせて、より効果的で安全なワクチンをより早く提供するための取組みが進んでいます。
免疫は個人毎に作られていくものですが、集団としての免疫力はたくさんの人数で免疫ができることが必要と言われています。具体的に何割くらいの人が免疫を獲得すれば集団免疫が得られるかは、さまざまな意見があり、研究が進められています(2020年6月現在)。新型コロナウイルス感染症ではR0(基本再生産数)が話題となりました。十分に対処された集団では感染がおこりにくく、また他の人に伝染しにくくなります。
京都府立医科大学「ワクチンの話」:
http://www.pref.kyoto.jp/hokanken/documents/oyakudati_wakutin.pdf
山岸義晃「ワクチンの種類とその構成物・開発状況」:
http://www.hosp.ncgm.go.jp/isc/080/FY2018/03_201903.pdf
稲葉寿「基本再生産数・タイプ別再生産数・状態別再生産数」:
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1653-04.pdf
山岸義晃「ワクチンの種類とその構成物・開発状況」:
http://www.hosp.ncgm.go.jp/isc/080/FY2018/03_201903.pdf
【図解】R0(基本再生産数)とは? 感染症疫学用語の基礎知識:
https://www.afpbb.com/articles/-/3276018
*ジェンナーのエピソードを知らない子が置いて行かれないよう、お話のように膨らませてみました。
少ないですが、児童向けに伝記も出ているようです。:
https://www.izumishobo.co.jp/onlinebook/c02_denki/jennar/index.html